絵文字や顔文字は直接的に感情を伝える方法として有効です。フランクなコミュニケーションが好まれる携帯電話のメールやメッセージアプリで多用されています。従来は男性あるいは女性を連想させるものでした。しかし昨今の人々がジェンダーについて深く考えるようになったことをうけて、appleは男性でも女性でもない絵文字と顔文字を世界で初めて作りました。

ここでジェンダーニュートラルな絵文字や顔文字は従来も存在していたと人もいます。例えば黄色くて丸い顔をした絵文字は、ウインクしたり泣き笑いしたりしています。はっきりと性別が分かる特徴は持っていませんが、研究では特徴的な要素を持たない顔は男性のものだと認識すると明らかにされました。よってこれらが表示された時、無意識に男性をイメージしていることになります。

一方で女性を表現する時は口紅などのメイクをさせたり目を大きくさせたりと、ステレオタイプな女性像が使われることが分かっています。意識していなくても性別とは切り離せないツールだったということです。この事態は多様性を尊重する時代にはふさわしくありません。性別が定まっていなかったり、性別の概念そのものを嫌悪したりする人にとっては生きづらさに繋がるためです。生き方に賛同している家族や親しい友人とメールするたびに、男性あるいは女性を選択して生きなければならないと追い込んでしまいます。

さらに自分を正しく表していない顔文字に対して感情移入ができないので、コミュニケーションがつまらなくなり機能を最大限に活用できません。appleは男性と女性の選択肢と並んでジェンダーニュートラルの項目を増やしました。また恋人を意味する絵文字では、性別の他にも肌の色を自由に決めることができるようになり人種に対する誤ったこだわりも払拭しました。今回の改革ではジェンダーニュートラルの表現が浸透すれば、性別を選択しない人々の見た目が「こうあるべきだ」という考え方が作られてしまうという指摘もあります。

多様性が注目されるようになった現在でも、トイレや書類の記入などで特定の性別を決めなければならないシーンに遭遇します。携帯電話でも辛い状況に追い込まれるのは、そのような人々の望んでいることではありません。appleは当たり前とされていた価値観を柔軟に変化させ、あらゆる人々が楽しく携帯電話を使えるように日々多様性につながるアップデートを試みています。